NPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」の取り組み~子どもの権利を守り、虐待から子どもたちを守る活動~

今日もいろんな生き方白書にお越しくださいましてありがとうございます!

今回のテーマは

「児童虐待」

です。

先日、「虐待について思うこと」という記事を投稿しました。かつて虐待をしてしまったという方のお話を聴いたことをきっかけに、児童虐待について理解を深めたいと思い、これに関する団体に取材させていただく運びとなりました。

児童虐待の現状

昨今、児童虐待に関する事件が立て続けに報道され、多くの人が心を痛めていることと思います。2019年1月には千葉県野田市で小学4年生の女の子が、2018年3月には東京都目黒区で5歳の女の子が虐待によって殺害されました。

また、児童相談所に寄せられる児童虐待相談件数は増加の一途を辿っている(※1)ことから、児童虐待は私たちの身近な問題と捉えることができるでしょう。その他、2004年に児童虐待防止法が改正されて面前DV(子どもの目の前で配偶者に対して行われる暴力)も心理的虐待に含まれ、2018年には児童相談所に寄せられた全通告のうち44.8%を占めています(※2)。

※1 厚生労働省ホームページ「平成29年度 児童相談所による児童虐待相談対応件数」 H31年3月27日閲覧https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000348313.pdf
※2 警察庁ホームページ 「平成30年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」 H31年4月2日閲覧https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hikou_gyakutai_sakusyu/H30.pdf

児童虐待を取り巻く現状を改善するには、この問題に対する社会全体の取り組みが重要だということは言うまでもありません。

そのような中で、児童相談所と連携を図り、児童虐待から子どもたちを守る活動をされている民間団体が富山県射水市にあることをご存知でしょうか。

NPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」

今回、児童虐待から子どもたちを守る活動をされているNPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」副理事長の藤田千恵さんにインタビューさせていただき、活動内容についてお話をお伺いしました。

NPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」
富山県射水市三ケ3652-2
http://npo-palette.org/

1.沿革

編集長「本日はお忙しいところ時間を割いていただきましてありがとうございます。はじめに、子どもの権利支援センターぱれっと様の沿革について教えてください」

藤田さん「当団体は、旧:小杉町(現:射水市)が平成15年に全国に先駆けて“子どもの権利条例”を自治体として制定した(※3、※4)ことを皮切りに、同年、子どもの居場所を作る活動(ほっとスマイル)を開始しました。さらに、平成18年度からは富山県からの委託事業として“家族再統合支援事業(えくぼ)”という、児童虐待に関する家族支援に取り組んでいます」

※3 射水市ホームページ「射水市子ども条例」H31年3月27日閲覧
http://www.city.imizu.toyama.jp/guide/svGuideDtl.aspx?servno=3451
※4 子どもの権利条約の概要 日本ユニセフ協会ホームページ「子どもの権利条約」より以下引用H31年3月27日閲覧https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html

「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様ひとりの人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定しています。1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効しました。日本は1994年に批准しました。

2.家族再統合支援事業(えくぼ)

編集長「家族再統合支援事業(えくぼ)とはどのような活動ですか?」

藤田さん「本来、家族再統合というと、児童虐待等によって分離された親子がもう一度家族で生活することを支援していくことですが、それだけでなく、一緒にすごしていても適切な関わりをして親子の信頼関係を取り戻すことも含んでいます。
私たちの事業では、不適切な関わりをしてしまった親の話しを聞き、行為を責めるのではなく、そうせざるを得なかった気持ちに寄り添い、どうしたら良いかを共に考えていく、という事を、富山県からの委託事業として進めています」

編集長「具体的にはどのようなことをされているんですか?」

藤田さん「まず、虐待をしてしまった保護者と面談をすること。さらに、虐待された子どもたちの通う幼稚園や保育園、小学校、中学校に赴いて、教育機関と児童相談所と連携を図って情報を共有する“見守り機関調査”。そして、グループワークを通じて虐待してしまった保護者の皆さんと子育ての悩みや虐待の悩み等を気軽に話せる場を提供する“親の会(ぐるーぷえくぼ)”という活動に取り組んでいます」

編集長「グループワークは民間団体ならではの活動ですね」

藤田さん「はい。それから、児童相談所は公的機関なので人事異動等で長期間の支援には限界があります。当団体は一人ひとりの保護者や子どもたちと長期間にわたってじっくりと向き合えます

編集長「長期間の支援が出来ることは民間団体の最大の強みですよね」

藤田さん「児童相談所の支援に抵抗があるという保護者もいらっしゃいますので、そのような方々を支援できるのも民間団体だからこそだと思います」

「子どもたちにとって最善の利益」を重視して活動

編集長「虐待から子どもたちを守るために真っ先に思い浮かべるのが親子分離ですが、その後はどのようなことが大切なんですか?」

藤田さん「当団体が重視して考えることは“子どもたちにとって最善の利益”です」

編集長「“子どもたちにとって最善の利益”とはどういうことですか?」

藤田さん「子どもたちにとって、親はたったひとりだけの存在です。たとえ虐待されていたとしても、子どもたちは親と一緒に暮らしたいと願っています

編集長「“子どもたちにとって最善の利益”が何なのか、見極めることは難しそうですね」

藤田さん「“子どもたちにとって最善の利益”という文言は、子どもの権利条約で大切にされている部分です。何が“子どもたちにとって最善の利益”なのか、見極めることは非常に難しく細心の注意を払っています」

虐待してしまう保護者への支援~ボーイズタウンコモンセンスペアレンティング~

編集長「先日、かつて虐待してしまったことのある方のお話を聴く機会があったのですが、そのお話を聴いて虐待に対する考え方が変わりました。今までは虐待する親のことを理解できなかったんですけど、そのお話を聴いて、虐待する親を責め立てることは出来ないと思いました」

藤田さん「虐待する親というのは、過去を辿っていくと自身も虐待された経験があるというケースがあります」

編集長「虐待の悪循環に陥ってしまうんですね」

藤田さん「子育てというのは誰もが初めて経験することです。ですから、自身が親にされていたことと同じことを子どもにしてしまう可能性があります」

編集長「子育ての方法を知らないということにも原因があるんですね」

藤田さん「はい。当団体ではグループワークの他に、どのように子育てをすればよいかをお伝えする研修も開催しています

編集長「どのような研修なんですか?」

藤田さん「“ボーイズタウンコモンセンスペアレンティング(※5)”というプログラムです。これは、アメリカ最大の児童養護施設“ボーイズタウン”が長年の研究や経験をもとに開発した一般向けの育児プログラムです」

※5 ボーイズタウン コモンセンスペアレンティング H31年4月2日閲覧
http://www.csp-child.info/index.html

編集長「そのようなプログラムが確立されているんですね」

藤田さん「数種類のプログラムがあるんですが、育児に悩む保護者の方には“CSP(幼児版)”の受講がよろしいかと思います」

編集長「親に対する支援は、家族の再統合に大切なことですね」

藤田さん「ボーイズタウンコモンセンスペアレンティングにご興味をお持ちの方は、当団体までご相談いただけたらと思います

児童虐待のこれからとSDGsのゴール~2030年までに子どもに対する暴力を撲滅させる~

編集長「児童虐待の防止に関して、大きな目標はあるんですか?」

藤田さん「SDGs(エスディージーズ)の16.2です

編集長「SDGs(エスディージーズ)・・・初めて聞きました」

藤田さん「SDGs(エスディージーズ)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています(※6)」

※6 外務省ホームページ「SDGsとは」より引用 H31年4月1日閲覧
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

編集長「そのような取り組みがあるんですね」

藤田さん「このSDGs(エスディージーズ)条文の16.2に“子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する” (※7)と謳われています。

※7 外務省ホームページ「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳」より引用 H31年4月1日閲覧
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000101402.pdf

編集長「2030年までに児童虐待を撲滅するということですか?」

藤田さん「そうです。もちろんSDGs(エスディージーズ)の取り組みに日本も参加しています」

編集長「SDGs(エスディージーズ)の取り組みは、児童虐待に携わる皆さんも認識されているんですか?」

藤田さん「2018年11月30日と12月1日の2日間に亘って開催された“日本子どもの虐待防止学会 第24回学術集会おかやま大会”にて、講師の大谷美紀子先生が“SDGsの16.2”について講演されていらっしゃいました。また、同大会のシンポジウムのテーマにもなっていました」

編集長「SDGsの16.2実現に向けて社会の機運が高まっていますね」

藤田さん「私もこの大会に参加させていただいたのですが、この講演を聴いて身震いするほど感激しました。社会全体が児童虐待の撲滅に関心を寄せて、そして児童虐待の撲滅が実現する未来が見えました」

編集長「そのような社会の実現に向けて、私もブログで情報を発信していきたいと思います。本日はお忙しいところ取材にご対応くださいましてありがとうございました」

取材を終えて

藤田副理事長に児童虐待に関するお話を伺って、正直なところ不安を覚えてしまいました。児童虐待問題は生身の人間が不利益を被り、心身ともに傷を負うという現状があると頭では理解していたつもりでした。しかし、藤田副理事長のお話を伺うにつれて、私自身の覚悟が足りなかったことを思い知らされてしまったのです。

児童虐待問題は非常に複雑でデリケートです。そのような問題をブログの記事にして世界に発信することに大きな責任が伴うということを痛感しました。

今後も児童虐待問題に関心を寄せて、新しい情報があれば「いろんな生き方白書」にて発信していきたいと思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。